前回、持ち続けた場合と、最適化売買サインで投資した場合のパフォーマンスの比較を行いました。経済の高度成長期の投資なら、じっと持ち続けているだけで良かったのですが、最近の相場では右肩上がりの株価推移が期待できません。売買を繰り返すことで、わずかな振れ幅で推移している相場でも、リターンをより増やすことが可能になります。しかし、闇雲に売買の回数を増やせばよいかというと、そうとは限りません。それぞれの銘柄の値動きにフィットさせた売買を行う必要があることは、いうまでもありません。
投資の基本として「バイアンドホールド」の考えが基本にあります。投資の初心者は、まずここからスタートするでしょう。これは、一番リスクが小さいと考えられることも理由に挙げられるでしょう。この場合、損失を出す可能性がある最大の金額は、その銘柄に投下したお金の総額に限られます。他の投資手法を選ぶと、それ以上の損失を被ることがあります。ですからリスクが比較的小さいと考えられるのです。
しかし、この他にもバイアンドホールドが支持される理由があります。それは、これまで戦後の日本の株式相場でバイアンドホールドでリターンを得るスタイルが定着してきたからなのです。例えば、バブル時代の東京市場（日経平均株価の株価）をご覧ください。今では考えられないほどの順調な右肩上がりのチャートの推移となっています。日本中の経済が発展している時代です。バイアンドホールド、すなわち安く買って高いところで売るという手法が成立したのです。
しかし、現在の相場はどうでしょうか。再び日経平均株価をご覧ください。バブル当時とはまったく違う形をしています。上がったり下がったりしながら山がいくつもあります。つまり、このような相場の時には、持ち続けていても必ずしもリターンが得られるとは限らないのです。今の時代には、買いで取り、売りでも取る。そんな「バイアンドセル」の手法を使う方が有利になっているのです。
時代が変われば、相場の流れがかわります。売買手法も変えねばならないのは自明のことです。「20年前に大儲けしたから、その投資手法を今も変えずに続けている」という考えは、必ずしも正解ではないのです。方針を曲げないという精神力は、素晴らしいものかもしれません。投資対象が幸運なことに、右肩上がりを続けるかもしれません。しかし、その成功美談は、精神力だけでなく、選球眼も神業的なレベルを求められるはずです。誰にも保障された幸運はないと知るべきです。
(2011/1/14更新)
