移動平均線の見方
 移動平均線は、米国のチャート分析家J・E・グランビルが統計学の移動平均法を株価動向の基調測定に導入し、200日移動平均線を紹介したことが普及の第一歩とされています。日本には昭和30年代後半に伝わり、現在では株価の方向感をつかむ最も基本的なトレンド系投資指標として広く知れわたっています。
■移動平均線の計算方法
 移動平均線は、一定期間の株価の終値平均値を、毎日(または毎週、毎月)割り出してグラフ化したものです。例えば25日移動平均線の場合、直近の25日間の終値を合計し、25で割ったものが第1日目(直近日)の移動平均値となります。2日目以降は、順次前日までの合計値に新しい終値を加えると同時に、25日前の終値を除外して25で割っていきます。このようにして毎日平均値を求めていき、計算された平均値を線で結んでグラフ化すれば、25日移動平均線になります。

移動平均線の計算式




X:移動平均値
P:株価
Y:算出の対象とする期間
※移動平均値Xは、過去Y期間での平均買いコストと捉えることができます

 移動平均線は、株価の一時的なブレに惑わされず、趨勢や傾向を見るのに役立ちます。期間の取り方も、例えば日足ベースでも5−10日の短期線から、200日の長期線まで長短様々ですが、ローソク足や他のテクニカル指標と組み合わせることで、相場の基調が読みやすくなり、株価の転換点を見つけるのに役立ちます。


■移動平均線の基本的な見方
 では、移動平均線を売買の参考にする際、どのような点に注意が必要でしょうか。 

○株価と移動平均線の位置関係・方向性
 まず、株価が移動平均線よりも上にあるか下にあるかという点に注意しましょう。
 基本的に、
株価が移動平均線よりも上位にある場合は強気局面
下位にある場合は弱気局面
−といえます。

 次に、移動平均線の向きにも注意します。
 基本的に、
移動平均線が上昇中の場合は強気局面
横バイなら強弱感が対立する小動き局面
下降中なら弱気局面
−と考えられます。

 以上の2点に注意してチャートを見てみると、移動平均線が上昇中の強気局面では、移動平均線が下げ止まりの転換点として機能する支持線となっている場合が多く見られます。逆の場合もまた然りで、弱気局面では上げの抵抗線となっている場合が多く見られます。

9984ソフトバンク(週足)


■グランビルの8法則
 移動平均線を考案した前述のJ・E・グランビルが、株価と移動平均線の位置関係に着目して、売買のポイントを8つにまとめたものです。



■移動平均線の期間設定
 次に、移動平均線の期間の長さについて考えてみます。移動平均線は、設定期間が短いほど現実の株価の動きにより近くなり、逆に、設定期間が長いほど動きがなだらかで長期的な趨勢を示すという性質があります。さらに言えば、期間を短くとれば短期トレンドが抽出でき、変化に素早く対応できるというメリットがある一方で、「ダマシ」も多くなるというデメリットがあります。期間を長くとれば長期トレンドが抽出でき、「ダマシ」が少なくなるというメリットがある一方で、変化が緩慢になり認識の遅れを招くというデメリットがあるという訳です。このように、期間のとり方によって様々な種類の移動平均線を描くことができ、各移動平均線によって短所・長所が異なることから、1種類の移動平均線に依存するよりも複数の移動平均線の動きを観察した方が、より適切な判断に近づくことができると言えます。
一般的には、日足では超短期線として5日線、短期線として25日線、中期・中勢線として75日線、長期・大勢線として200日線
週足では中期・中勢線として13週線、長期・大勢線として26週線、52週線
月足では長期・大勢線として12・24・60ヵ月線
−の動きを観察します

○短期線は素早く、長期線は遅れて株価に追随
 相場における強気・弱気の変化は、短期移動平均線から長期移動平均線へと波及していきます。仮に、数カ月間の下落が続いた株価が、逆に数カ月間に及ぶ反発に転じたとすると、具体的には5日→25日→13週(65日)→75日(15週)→26週→200日(40週)→52週という順に、株価が移動平均線を突破していくばかりでなく、移動平均線自身も株価を追って短期→長期の順に下降から上昇に転換していくことになります。


■ゴールデンクロス・デッドクロス
 短期移動平均線が中期や長期の移動平均線を、あるいは中期移動平均線が長期移動平均線を下から上に突き抜ける動きで交差することを「ゴールデンクロス」と呼びます。逆に、短期移動平均線が中期や長期の移動平均線を、あるいは中期移動平均線が長期移動平均線を上から下に突き抜ける動きで交差することを「デッドクロス」と呼びます。
 「ゴールデンクロス」は下降していた株価が上向きに転じたことを確認するシグナルとして、「デッドクロス」は上昇していた株価が下向きに転じたことを確認するシグナルとして有効に機能することがあります。ただ、いずれもかなりの短期で設定された移動平均線同士のクロスでない限り、株価の現実の動きにやや遅れ気味になるという傾向は心得ておくべきで、相場の強気(弱気)転換の追認ポイントを認識するための手段と捉えておくのが妥当と思われます。

 以上のように、複数の移動平均線を組み合わせることで相場の転換点を示唆するシグナルとなり得る訳です。



■移動平均線カイ離率
 ここまでは移動平均線の動き方や株価との位置関係でチャートを見てきましたが、厳密に数値でチェックすることもできます。
 移動平均線カイ離率とは、株価が移動平均線に対してどれくらい離れているか(カイ離しているか)を見るものです。移動平均線そのものは、株価が近づいたときに転換点や方向性を見る指標といえますが、この移動平均線カイ離率は、株価が平均線から離れたときに利用する指標といえます。ここでは移動平均線が上昇中か下降中かは考慮せず、株価と平均線のカイ離率だけを問題にします。
 移動平均線カイ離率は、「移動平均線に対する大幅な株価のカイ離(上方・下方)はやがて修正される」という経験則に基づき、相場の行き過ぎ(株価の上げ過ぎ、下げ過ぎ)をチェックするのに有効です。一般的に日足ならば25日移動平均線、週足ならば26週移動平均線を使い、カイ離率が10〜20%を超えると過熱感が強いとされ、株価に修正が入りやすくなります。ただし、目安となるカイ離率は銘柄によって変わってきますので、どのくらいのカイ離率で反転しているかを銘柄ごとに確認しておく必要があります。

 いままで見てきた移動平均線は、要はその期間中に株を買った人の買い値の平均値ですから、買い値より大きく上昇すれば売りたくなるでしょうし、下げ始めれば利益確定のために投げ売りしたくもなります。いわば、“相場心理の平均線”とも言えるのです。

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