「テクニカル分析は、どの銘柄にでも合うわけではない――」
投資歴の長い方であれば、日頃チャート分析をじっくりされている中で、すでに気付かれていたことではないでしょうか。例えば、移動平均線を使うとしましょう。もちろん、その指標自体に特徴はありますから、その点は理解しないといけません。移動平均線は遅行線ですから、必ず株価の動きより遅いのです。ですから「どうしてこんなに遅いんだ！」と言ってはいけません。「遅れる」ということを認識して用いるなら、順張りの売買サインにはもってこいの指標と言えるからです。移動平均線を使っても十分リターンが得られる銘柄があるのは、そうした有利な場面をたくさん作る値動きがあったということでしょう。
それぞれの銘柄における株価の動きが一律ではないので、すべての銘柄にフィットする売買サインは単純には特定できません。どの銘柄も同じような波動で動いていれば、私たち投資家は、こんなに投資で苦しむことはなかったかもしれません。しかし、それでは相場が成り立たないではありませんか。現実はむしろ「滅多にしっくりくるサインがない」と言えるほど、多様な値動きが繰り広げられています。たとえば，株価が１円単位で動くものがありますね。チャートを見て「よく動いたな」と思っても、実は目盛の幅が10円単位だったりします。実際はまったく動いていません。値幅が小さいと、トレンド自体を捉えることも難しいものです。しかし、ならば、その穏やかな値動きを前提に、非常にたくさんの株数を商いして、安定した利益を追求することもできるのです。
そいう銘柄がある一方で、大きく上昇するもの、下降するものもあります。１割の上下は頻繁にあるというような銘柄ももちろんあります。このタイプなら、株数は小さくていいはずです。万が一投資をしくじっても、リスクを小さくできます。
一方で、ある一定のレンジで動いているという銘柄もあります。ボックス相場といわれるものですね。こちらもあまり明確なトレンドがあるとはいえません。トレンドラインを引いても、傾きの小さいトレンドラインしか引けません。
他にも、値のつかない銘柄があります。株式投資は、買ったり売ったりしないといけませんから、まずは値がつくことが前提となりますね。
このようにチャートにはそれぞれ特徴があるのです。テクニカル分析は、株価の動きを捉えるものです。ですから、あまり動きのない銘柄からトレンドを捉えるのは難しいため、その結果「どの銘柄に投資しても合うわけではない」ということになるのです。
テクニカル分析を行う前に、「どの銘柄にも合うわけではない」ということを基礎知識として知っておくと分析に役立ちますね。
(2011/11/11更新)